著作権法第1条目的

条文

第1条

この法律は、著作物並びに実演、レコード、放送及び有線放送に関し著作者の権利及びこれに隣接する権利を定め、これらの文化的所産の公正な利用に留意しつつ、著作者等の権利の保護を図り、もつて文化の発展に寄与することを目的とする。

目的

著作権法の目的とは?

「文化的所産の公正な利用」と「著作者等の権利の保護」とを両立しつつ、最終目的である「文化の発展」を達成する。

著作権法の最終目的は「文化の発展」である。

著作権法は「文化の発展」を最終的な目的としている。

これを達成するために、著作者の権利の保護と文化的所産の公正な利用を両立させることを目指している。

なぜなら、文化の世界では多様性が重視され、多種多様な作品の創作とその普及が文化の発展につながるからである。

これは、産業財産権法(例: 特許法、実用新案法など)は「産業の発達」を目的としているが、著作権法は文化の発展を目的としている。この違いは、技術的な問題を解決するための独自の解決策を模索する産業・技術の世界と、多様性を重視する文化の世界の違いに起因している。

さらに、著作権法では、特定の芸術性や学術性などを要求せず、多様な作品の創作とその社会での普及を奨励している。

依拠性について

著作物に対する権利の効力が及ぶのは、その著作物への依拠(アクセス)があり、それを基にした利用行為があった場合に限定する。それはなぜかというと特許権等と異なり、著作権法上の権利の存在や内容は公示されず、自身が創作しようとするものと同一または類似の著作物が存在するかどうかの完全な調査はほぼ不可能だからである。

権利の保護

著作権法では、創作者が生み出した作品に対する人格的利益の保護が重要。このため、強力な「著作者人格権」が認められている。

また、著作権の保護期間は、原則として著作者の死後70年と長期となる。この長期の独占がもたらす弊害は、著作権法が規律する多様性のある文化の世界では小さいと考えられている。

アイデア・思想は保護しない

著作権法では、アイデアや思想そのものの独占は容認されていない。保護対象となるのは思想や感情の「表現」のみとなっている。

文化の世界、すなわち著作権法が規律する世界では、多様なアイデアや思想を抱くことができる。もし、これら全てに長期の独占を認めると、多様な創作活動が阻害され、「文化の発展」につながらないとされているからである。

一方、特許法では「技術的思想」は保護対象とされているが、これは技術的な解決策や方法に関する考え方を指している。しかし、その保護対象も限定的であり、権利の存続期間も比較的短い。

このように、著作権法はアイデアや思想そのものの保護を避け、それらの具体的な表現のみを保護の対象としている。これは、文化の多様性を尊重し、創作活動の自由を確保するための考え方に基づいているからである。

著作権法の目的の根拠

主に「権利論」と「インセンティブ論」の2つが存在する。

権利論

著作者は、自らの思考や感情を表現することによって生み出された著作物に対して、権利を有するという考え方である。

この権利は、著作者の人格的な価値や尊厳を保護するものとして認識される。著作物は著作者の個性や思考を反映しており、その著作物に対する権利は、著作者の自己実現や人格の尊重に関連している。

著作権法は、この著作者の権利を保護するために存在する。

インセンティブ論

著作権の保護は、著作者や創作者に対して、新しい著作物を生み出すためのインセンティブ(動機付け)を提供するものとして認識される。

独占的な権利を提供することで、著作者は創作活動による経済的報酬を期待できる。これが新しい著作物の創作を促進する。

著作権法の存在は、文化的な資産の創出とその普及を奨励し、文化の発展を促進するためにも必要とされる。

「著作者等の権利の保護」と「文化的所産の公正な利用」の関係

著作権法の主要な目的は、著作者や関連する権利者の権利を保護することとなる。これにより、著作者は創作活動から得られる経済的報酬を確保できる。

一方で、著作物や文化的所産を広く社会で利用することは、知識の拡散や文化の発展に不可欠である。著作権法は、これらの公的な利益も考慮している。

このため、著作者の権利の保護と文化的所産の公正な利用の間には、緊張関係が存在している。

著作権法は、この緊張関係を解消するために、例えば「公正使用」や「著作権制約」などの概念を導入して、特定の利用行為を許可することで、バランスを取っている。

これにより、著作権法は、著作者の権利と社会全体の利益の間での均衡を追求している。

終わりに

現代において著作権法は複雑化している。著作権法は社会情勢の変化に合わせ、頻繁に改正している。著作権法は著作者等に強力な権利を持たせることで著作物の保護を行ってきたが、近年ではその文化的所産の公正な利用にも注目が集まっている。著作権法の最終目的である「文化の発展」を達成するためにも「著作者等の権利の保護」と「文化的所産の公正な利用」の両立を常に図る必要がある。

参考文献

『条解著作権法』(小泉直樹他、弘文堂、2023年6月15日

標準著作権法第5版(高林龍、有斐閣、2022年12月28日)

文化庁「令和5年度著作権テキスト」

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