著作権法 第二条 四項 写真の著作物

条文

第二条 4 この法律にいう「写真の著作物」には、写真の製作方法に類似する方法を用いて表現される著作物を含むものとする。

定義

本項の概要

本項は写真の著作物の範囲について規定しています。著作権法上では写真の著作物自体に明確な定義規定は存在しません。本項では写真の著作物には典型的な写真の著作物の他にも写真の製作方法に類似する方法を用いて表現される著作物が含まれることを規定しています。著作権法では写真の著作物に含まれる著作物を製作方法に類似していることと定義しています。ベルヌ条約では写真の著作物について「写真に類似する方法で表現された著作物を含む。」と定義しています。

写真の著作物に該当する要件

本項では写真の著作物に該当するための要件として

  • 写真の
    • 製作方法に類似する方法を用いて表現される
    • 著作物

の3つが必要です。

写真の

著作権法には「写真」の定義は存在しません。それゆえに、著作権法上の「写真」は一般的に考えられる「写真」と同義と考えられるでしょう。一般的には、写真とは物理的または化学的方法で、被写体をフィルムや印画紙等に影像として再現するものを指すと考えられていた。(中山信弘『著作権法(第4版)』, 有斐閣社,2023年10月30日,127頁)元々立法当初は写真といえば銀塩写真しか存在しませんでしたが、現在のデジタル写真も著作権法上の「写真」に該当すると考えても問題はありません。

製作方法に類似する方法を用いて表現される

本項より写真の著作物に該当するためには写真の製作方法に類似する方法を用いて表現されていることが必要になります。そのため、単に著作物が写真のように見えるだけでは写真の著作物に該当しません。「写真の製作方法」とは化学的や技術的な手段を用いて写真を製作する方法です。写真の製作方法というのは、写真を特徴付けるような化学的あるいは技術的な方法を指しておりまして、写真の著作物に含まれるものとしては、例えばコロタイプ・グラビア・写真染め・写真織というようなものが挙げられるだろうと思います。(加戸守行『著作権法逐条講義(七訂新版)』公益社団法人著作権情報センター,令和3年12月21日,76頁)ネガ・ポジ方式による従来型のものだけではなく、被写体を的確に二次元の表現物として複製し得るものであれば該当する。(作花文雄『詳解著作権法[第6版]』,株式会社ぎょうせい,2022年12月20日,94頁)

立法当時は銀塩写真しか存在しませんでしたが、現在はデジタル写真の方が主流になっています。銀塩写真とデジタル写真では製作方法が大きく異なりますが、デジタル写真も著作権法上の「写真」に該当すると考えられます。そのため本項の規定から外れているとしてもその表現に創作性が認められれば写真の著作物に該当すると解釈できます。

他方でデジタル写真が銀塩写真と全く異なる技術的手段によって製作されていますが、カメラを用いて被写体を写し撮ることによって表現しているという制作方法は共通しています。

したがって本項の「写真の製作方法」を著作物としての表現方法と言う意味でとらえるのであるならば、銀塩写真とデジタル写真は類似した製作方法で作成されていると解釈することができます。これは前述の通り、ベルヌ条約が写真の著作物について「写真に類似する方法で表現された著作物を含む。」と定義していることを根拠にすることもできます。

そのためデジタル写真も創作性を有する限り、写真の著作物に該当することになります。

著作物に該当すること

当然ですが写真の著作物に該当するためには著作物の保護要件を満たす必要があります。つまりその表現に対して創作性が認められることが必要です。

参考文献

小泉直樹他,『条解著作権法』,弘文堂,2023年6月15日

中山信弘,『著作権法(第4版)』,有斐閣,2014年10月25日

加戸守行,『著作権法逐条講義(七訂新版)』,公益社団法人著作権情報センター,2021年12月21日

作花文雄,『詳解著作権法[第6版]』,株式会社ぎょうせい,2022年12月20日

斉藤博,『著作権法概論』,勁草書房,2014年12月26日

小泉直樹他,『著作権判例百選(第6版)』,有斐閣、2019年3月11日)

文化庁,「令和5年度著作権テキスト」

タイトルとURLをコピーしました