著作権法第二条 十の二 プログラム

条文

十の二 プログラム 電子計算機を機能させて一の結果を得ることができるようにこれに対する指令を組み合わせたものとして表現したものをいう。

定義

本号の概要

本号は、法律上の「プログラム」に関する定義を設ける条項について述べています。昭和60年の法改正で、プログラムの著作物の保護が具体的に記載されたため、プログラムの意義を明確化するためにこの条項が設けられました。

プログラムの定義

電子計算機を機能させて一の結果を得ることができるように

「電子計算機」、つまりコンピューターについて説明しています。コンピューターは、速くて大量の情報処理を目的とする機械で、記憶、演算、制御の3つの機能を持つ装置を含んでいるものを指します。この定義によれば、一般的なコンピューターやパソコンだけでなく、スマートフォンやゲーム機、電気炊飯器などの家電製品に内蔵されたマイクロプロセッサーも電子計算機に含まれます。

また、「電子計算機を機能させて一の結果を得る」とは、電子計算機を使って特定の作業を実行させることを意味します。この作業の内容や目的に制限はなく、電子計算機がその機能を発揮することが重要です。これには、利用者が望む作業を実行させるためのプログラム(アプリケーションプログラム)、ハードウェアを効率的に使うための制御プログラム(オペレーティングシステム:OS)、電子機器に組み込まれた機器の制御プログラム(ファームウェア)などが含まれます。

最後に、「電子計算機を機能させて一の結果を得ることができるように」とは、電子計算機を使って特定の結果を得ることを目指すことを意味しています。たとえバグがあって計画通りに動かないプログラムであっても、電子計算機に特定の仕事をさせる目的で作られていれば、この定義に当てはまります。

これに対する指令を組み合わせたものとして表現したものをいう。

電子計算機に特定の作業を実行させるためには、その作業内容や手順を電子計算機に明確に命令する必要があります。電子計算機への命令は通常、人間が読み書きできるプログラミング言語で書かれ、その後コンピュータが解釈できる機械語に変換されます。命令の集合体としてのプログラムは、機械語で書かれていて直接コンピュータを動かせる状態である必要はなく、機械語に変換可能であればコンピュータを動かすことができます。したがって、オブジェクトプログラム(機械語で書かれたプログラム)だけでなく、ソースプログラム(人間が読めるプログラミング言語で書かれたプログラム)も、法律上のプログラムとして扱われます。

「プログラム」 該当性

通常、複雑なプログラムはいくつかのモジュール(コンポーネント)で構成されています。これらのモジュールは、コンピュータに対して有意義な一連の処理を行うための指令が組み合わさって形成されています。もしそのモジュールが、コンピュータに対して完全な処理を行わせるのに十分な指令を含んでいれば、そのモジュール自体が一つのプログラムとして認識されます。

「当該記述が,独立性がなく,個別的に利用することができないものであったとしても,データ部分を読み込む他のプログラムと協働することによって,電子計算機に対する指令を組み合わせたものとして表現したものとみることができるのであるから,そのような記述も,同号所定のプログラムに当たる」

(東京地判平成15年1月31日判時1820号127頁 〔製図プログラム事件〕)

プログラムを作る前に作成される設計書は、コンピュータに命令を出す目的ではないため、プログラムとはみなされません。同様に、プログラムを実行して生成される成果物(画像や音楽など)も、プログラムそのものではありません。ただし、これらの表現に創造性があれば、プログラムの著作物ではなくても、他の著作物として保護されることがあります。

参考資料

条解著作権法(小泉直樹他、弘文堂、2023年6月15日

著作権判例百選(第6版)(小泉直樹, 田村善之, 駒田泰土, 上野達弘 有斐閣、2019年3月11日)

文化庁「令和5年度著作権テキスト」

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