著作権法第二条 十の三 データベース

条文

十の三 データベース 論文、数値、図形その他の情報の集合物であつて、それらの情報を電子計算機を用いて検索することができるように体系的に構成したものをいう。

定義

本号の概要

この条項では、「データベース」という用語の定義を規定しています。これは第12条の2データベースの著作物とともに法改正で新しく追加されたものである。以前からデータベースは編集著作物として保護される可能性があると考えられていました。しかし、第12条にある「素材の選択又は配列」という表現は、電子データベースの創造的な工夫を適切に捉えていないとの指摘がありました。そのため、第12条の2で「情報の選択又は体系的な構成」に創造性があるデータベースを著作物として保護するための新たな条項が設けられました。これにより、「データベース」という用語に定義が与えられたのがこの条項です。この改正の主な目的は、データベースへの新たな保護を創出することではなく、データベースが法的に保護される対象であることを明確にすることにありました。

論文、数値、図形その他の情報の集合物

データベースは情報の集合物として定義されていて、素材には特定の制限がありません。論文、数値、図形など、著作物であれ非著作物であれ、人間にとって意味のある内容を持つ情報が含まれます。後半部分で述べられているように、データベースに含まれる情報は検索可能でなければならず、それ自体に独立性と意味を持つ必要があります。また、情報を検索するためのコンピュータープログラムは、データの集合体とは異なり、独立した創作物として扱われる。

「eBASEserver」は,食品の商品情報を広く事業者間で連携して共有する方法を実現するためのデータベースを構築するためのデータベースパッケージソフトウェアであって,食品の商品情報が蓄積されることによりデータベースが生成されることを予定しているものである。そうすると,このような食品の商品情報が蓄積される前のデータベースパッケージソフトウェアである「eBASEserver」は,「論文,数値,図形その他の情報の集合物」(著作権法2条1項10号の3)とは認められない。」

(東京地判平成30年3月28日平27(日) 21897号 平28 (7)37577号 〔eBASEserver事件〕)

電子計算機を用いて検索することができるように体系的に構成したもの

情報の集まりであっても、電子計算機を用いた検索が不可能なものはデータベースとはみなされない。そのため、データベースとして扱われるためには、通常、デジタル化されている必要があるとされているが、一部の見解では、必ずしも機械可読形式である必要はないとされている。しかし、機械が読み取れないものは、編集物として扱うのが適当であり、データベースには該当しないと理解される。法律上、「編集物」の定義はないが、データベースは編集物には含まれないと規定されているため、非電子的なものは編集物とされる。

さらに、データベースと認められるためには、検索可能な状態で体系的に構成されていることが求められる。「体系的構成」とは、収集した情報を整理し、項目や構造形式を定めたフォーマットを作成することを指す。これは物理的な配置や、編集物における「配列」とは異なる概念である。現代では、デジタル化された情報は、整理や体系化されていなくても検索可能なことが多いが、キーワードの付与、情報のグルーピング、フィールドの指定などの整理・体系化の存在により、データベースとみなされることになる。」という表現になります。

「また体系的構成に創作性があるというためには,収集,選定した情報を整理統合するために,情報の項目,構造,形式等を決定して様式を作成し,分類の体系を決定するなどのデータベースの体系の設定が行われることが必要であると解される。」

(東京地判平成26年3月14日平21 (ワ)16019号〔旅行業者用データベース事件第1審〕)

「リレーショナル・データベースにおいては,入力される情報はテーブルと呼ばれる表に格納され,各テーブルはフィールド項目に細分され,あるテーブルのあるフィールド項目を他のテーブルのあるフィールド項目と一致させてテーブル間を関連付けることにより,既存の複数のテーブルから抽出したいフィールド項目だけを効率的に選択することができるデータベースであるから,情報の選択又は体系的な構成によってデータベースの著作物と評価することができるための重要な要素は,情報が格納される表であるテーブルの内容(種類及び数),各テーブルに存在するフィールド項目の内容(種類及び数),各テーブル間の関連付けのあり方の点にあるものと解される。」

(東京地中間判平成14年2月21日平12 (7) 9426号 〔新築分譲マンションデータベース事件〕)

「原告の担当者は、タウンページデータベースの職業分類に個々の電話番号情報を当てはめるために、掲載者から取扱商品や事業内容についての情報を聴取していることが認められ、証拠(甲一九、証人塩谷卓也)によると、右聴取には、一定の技術や経験が必要であると認められるが、右のあてはめの過程は掲載するかどうかを選択するものではないこと、タウンページデータベースの職業分類は、前記のとおり一八〇〇にわたって細かく分かれているから、いずれの職業分類に入れるかの選択の幅は小さいものと考えられ、右の技術や経験も主として個々の掲載者の事業の内容をいかに正確に把握するかという事実認定に関するものであると考えられることからすると、右のあてはめの過程に情報の選択又は体系的な構成について創作性が存するとは認められない。」

(東京地判平成12年3月17日判時1714号128頁 [NTTタウンページ事件〕)


参考資料

条解著作権法(小泉直樹他、弘文堂、2023年6月15日

著作権判例百選(第6版)(小泉直樹, 田村善之, 駒田泰土, 上野達弘 有斐閣、2019年3月11日)

文化庁「令和5年度著作権テキスト」

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