著作権法第二条 十三 録音

条文

第二条 十三 録音 音を物に固定し、又はその固定物を増製することをいう。

定義

本号の概要

本号では、「録音」の定義規定です。「録音」は複製の一種に含まれます。ただし、本法上では複製のうち「録音」と「録画」のみが対象に条文で定義づけられており、本号では特に「録音」についての定義を行っています。

音を物に固定し

録音は「音」、聴覚で知覚可能なものを対象にしています。「音」を物に固定する必要があります。物への固定要件は映画の著作物も同様です。

「物に固定されているとは、著作物が、何らかの方法により物と結びつくことによつて、同一性を保ちながら存続しかつ著作物を再現することが可能である状態を指すものということができる。」

(東京地判昭和59年9月28日無体集16巻3号676頁〔パックマン事件〕)

これは映画の著作物の事例ですが、録音も同様に、装置等を使用して音を物に保存し、その音が同一性を保ちながら存続しかつ再製できることが可能である状態で物に固定されている必要があります。

その固定物を増製することをいう

音の固定物を増製することをいいます。音を物に固定することを録音と定義していますが、「増製」、すなわち物に固定された音を別の物に固定する行為も録音の定義に含まれます。

「増製」に関して、固定された音をどこまで変更を加えずに行われる場合に限定するかどうかが議論の対象となっています。

以下の裁判例は元の音声にある程度変更を加えても「増製」と定義した例です。

「被告会社販売品のそれには極端なバラツキがあること、前者がステレオ録音であるのに対し、後者はモノーラル録音であること、後者は前者に比して、録音レベルが約一〇デシベル低く、明瞭度に欠け、かつ、高音域が不足していること、また、リーダーテープ及び磁気テープの仕様並びにこれらの接着部の方式を異にするほか、カセツトテープのその他の各構成部品の仕様をも異にする等の差異があり、右被告会社販売品はTDKの製作にかかるオリジナルテープそのものではありえないこと。以上の認定事実を総合すれば、被告らは、昭和四九年頃から本訴提起(昭和五一年九月三日)までの間、共同して、ほしいままにオリジナルテープを増製して録音済みテープを製作し、これに「聞く昭和史」なる題名を付し、別途製作した「見る昭和史」と題する写真解説集と合わせて商品化したうえ、一般顧客に販売したものであり、しかも、前述の大和産業株式会社を通じて販売された約七〇〇セツトはもとより、新潟県学校生活協同組合及び被告会社店舗を通じて販売された商品も、その大部分は右の無断増製にかかる録音テープを含むものであつたことを推認するに十分である。」

(東京地判昭和53年11月8日無体集10巻2号569頁 〔昭和の記録事件])

多方で、「増製」とは、元の音声に完全に同一である必要はありませんが、元の音声に対して強いサウンドエフェクトが加えられた場合にまで含まれると解釈するのは難しいとする意見も存在します。

「増製」という用語は、元々は実質的に同一のものを作成することを意味しています。著作権や著作隣接権の文脈では、これらの権利の目的を考慮すると、特定の固定方法に限定する意味で使われていると理解さます。完全な同一性は必要ないと考えられますが、元の音声に創作性を付加された場合、それは複製の範囲を超え、増製には当たらないと考えることもできる。

参考資料

条解著作権法(小泉直樹他、弘文堂、2023年6月15日

著作権判例百選(第6版)(小泉直樹, 田村善之, 駒田泰土, 上野達弘 有斐閣、2019年3月11日)

文化庁「令和5年度著作権テキスト」

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