著作権法第二条 十六 上演

条文

第二条 十六 上演 演奏(歌唱を含む。以下同じ。)以外の方法により著作物を演ずることをいう。

定義

本号の概要

本号では、 「上演」を定義する規定です。「上演」とは、支分権の1つである上演権の対象となる著作物利用です。

著作物を演ずること

「上演」とは、著作物を演じる行為のことです。「上演」には演奏や歌唱は含まれません。「実演」の定義には「著作物を、演劇的に演じ、舞い、演奏し、歌い、口演し、朗詠し、又はその他の方法により演ずること」とありますが、この中でも「上演」は演奏と歌唱が該当しないと規定しています。そのため「上演」とは上記の実演から演奏・歌唱行為を除いた行為になります。具体的には脚本等の著作物を演じること、振り付けなどの著作物を踊ること、漫才等を行うこと、詩を吟ずることが該当します。「上演」は著作権で規定している利用行為であり、実演家は著作隣接権で実演家の権利の定義に関係することから区別して考えるという意見もあります。

演奏(歌唱を含む。以下同じ。)以外の方法により

本法では、演奏の定義が明記されていませんが、音楽的な方法で表現することを指し、音楽の著作物が演奏の対象とされています。演奏には歌唱も含まれるため、本法では楽器の演奏だけでなく、歌う行為も演奏に含まれます。一般的には、音楽の著作物を演じる際、それは上演ではなく演奏に該当しますが、ミュージカルやオペラのように演劇的な要素と歌唱や楽器による音楽が組み合わさった表現は、これらが演奏に該当するのか、あるいは上演に該当するのかは必ずしも明確ではありません。

口述との区別

本法では、支分権の一部として、上演権とは別に口述権が存在します。口述権の対象となる「口述」は、 「著作物を口頭で伝達する」こととして定義され、実演に含まれるものは除外されています。実演には口頭での表現が含まれるため、「口述」と「口演」は異なるものと区別され、両者の違いは演劇的な要素の有無によるとされています。例えば、声優によるセリフの発声は口演に該当すると見なされますが、俳優が小説を朗読する行為に演劇的要素があるかどうかは意見が分かれる場合があります。

参考資料

条解著作権法(小泉直樹他、弘文堂、2023年6月15日

著作権判例百選(第6版)(小泉直樹, 田村善之, 駒田泰土, 上野達弘 有斐閣、2019年3月11日)

文化庁「令和5年度著作権テキスト」

タイトルとURLをコピーしました