著作権法第二条 十七 上映

条文

第二条 十七 上映 著作物(公衆送信されるものを除く。)を映写幕その他の物に映写することをいい、これに伴つて映画の著作物において固定されている音を再生することを含むものとする。

定義

本号の概要

本号は、「上映」を定義する規定です。著作権の支分権の1つである上映権の対象になる行為です。

著作物を映写幕その他の物に映写すること

「上映」とは、著作物を映写幕など何らかの物に映し出すことを言います。映写する対象は特に限定されていません。映画館のスクリーンを始め、投影用スクリーンに映写する行為やテレビやコンピューターのモニターに表示すること、タブレットやゲーム機の画面に表示する行為なども該当します。

「右の影像は、本来的意味における映画の場合は、通常スクリーン上に顕出されるが、著作権法は「上映」について「映写幕その他の物」に映写することをいうとしている(第二条第一項第一九号)から、スクリーン以外の物、例えばブラウン管上に影像が顕出されるものも、許容される。」

(東京地判昭和59年9月28日無体集16巻3号676頁 〔パックマン事件〕参照)


平成11年著作権法改正によって、映画の著作物限定だった上映権が全ての著作物を含むようになりましたので、上映も映画の著作物だけではなく言語の著作物や美術の著作物の映写等も含むようになりました。そのため連続した映像に限定せず、静止画の映写も上映に含むようになりました。

公衆送信されるものを除く

本号には公衆送信される著作物を映写幕その他の物に映写することは上映に該当しないことが明記されています。これは公衆送信される著作物については本法第23条公衆送信権等に定められている伝達権の対象であり上映権の対象にはなりません。このため、両者の権利を区別して対象を棲み分けることを意図しています。なお、あくまで除外されるのは公衆送信される著作物を映写する行為であり、公衆送信された著作物の複製物を映写する場合は上映に該当します。

映画の著作物において固定されている音を再生することを含むもの

映写は視覚的な表現を指し、映写によって音楽の著作物を再生することは通常これに含まれませんが、本号の定義では、映画の著作物に固定された音を再生することも上映に含まれるとしています。この規定は、映画の著作物と音楽著作物とでは密接な関係を持っていることを考慮し、両者を同様に扱うために設けられている措置です。

参考資料

条解著作権法(小泉直樹他、弘文堂、2023年6月15日

著作権判例百選(第6版)(小泉直樹, 田村善之, 駒田泰土, 上野達弘 有斐閣、2019年3月11日)

文化庁「令和5年度著作権テキスト」

タイトルとURLをコピーしました