著作権法第二条 十八 口述

条文

第二条 十八 口述 朗読その他の方法により著作物を口頭で伝達すること(実演に該当するものを除く。)をいう。

定義

本号の概要

本号では「口述」を定義する規定です。また支分権の1つである「口述権」の対象となる利用行為を明確化しています。

朗読その他の方法により著作物を口頭で伝達する

「口述」とは著作物を口頭で伝達する行為です。口述する方法は本号で例示されている朗読の他、演説や講義などが該当します。口述の対象となる著作物は限定されていませんが、口頭で伝達する都合上言語による伝達になるので言語の著作物が該当することでしょう。また、演劇や歌唱なども口頭による伝達に含まれますが、後述の通りこれらは実演に該当しますので口述には含まれません。口述権が言語の著作物に限定されていることからも口述が言語の著作物限定の行為であることを裏付けています(ただし、これは他の支分権との割り振りの関係上言語の著作物限定にしている理由から口述を区別することは実益と結びついていないという意見もあります。)

また口述に含まれない例として

「維持講習の講習資料は,講演の内容を示し,解説しているものではあるが,その性質上,内容が朗読等によって口述されるものではないのであって,同資料をもとに講演をすることをもって,同資料を口述したということはできない」

(知財高裁平成18年2月27日[計装工業会講習資料一審])

このように、口述は内容をそのまま朗読等する必要がある。

実演に該当するものを除く

実演の定義はすでに過去の記事で取り扱っていますが、「著作物を、演劇的に演じ、舞い、演奏し、歌い、口演し、朗詠し、又はその他の方法により演ずること(これらに類する行為で、著作物を演じないが芸能的な性質を有するものを含む。)をいう。」と規定されています。ここで例示されている「口演」は「口述」にとても近しいですが、両者の違いは演劇的な要素が存在するかどうかです。ただし、口述の例示には朗読が含まれていますが、声優が朗読する等の行為は演劇的な要素も含まれる可能性もありますので「口演」に該当するのか「口述」に該当するのか明確な区別はできません。支分権ではたとえ「口述権」に該当しない場合でも「上演権」に該当し、権利範囲などに差は無いため厳密に区別する必要は無いかもしれません。しかし、著作隣接権とは密接に関わって来ますので実演に該当するかを検討する必要があります。

参考資料

条解著作権法(小泉直樹他、弘文堂、2023年6月15日

著作権判例百選(第6版)(小泉直樹, 田村善之, 駒田泰土, 上野達弘 有斐閣、2019年3月11日)

文化庁「令和5年度著作権テキスト」

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