条文
第二条 七 商業用レコード 市販の目的をもつて製作されるレコードの複製物をいう。
定義
本号の概要
本号は、「商業用レコード」についての定義を定めています。 本法は、レコードの利用の中でも、商業用レコードが対象となる場合に特別に適用される規定を定義づけてます。商業用レコードが関係する条文には、69条3年録音強制許諾、95条および97条二次使用料請求権、95条の3、97条の3貸与権などがあります。
市販の目的とは
「市販の目的」といは、「市場で一般的に販売されること」や「商業的基盤のもとで一般的に販売されること」を指します。市販の目的を判断する際には、レコードそのものではなく、そのレコードの複製品がどのように販売されるかが基準となります。
製作の定義
本号にいう「製作」とは、レコード製作者や映画製作者などの条文に使われている 「製作」 とは意味合いが違います。それはレコードの有体物・複製物を「製造」することであり、「増製」の意味に近しいです。
レコードの複製物の定義
「レコードの複製物」には、言葉通りレコードを表すほか、CDやMDなどが含まれています。ただし、有体物ではない音楽配信におけるダウンロード販売はレコードの複製物には当たりません。
しかし国際条約では、例えば1996年に採択されたWIPO実演・レコード条約、通称「WPPT」(わが国も加盟)では、放送二次使用料に関する規定(15条)の適用に限って、「ネット上で提供されたレコードは、商業用レコードとみなす」との規定が置かれています。(芸団協・実演家著作隣接権センター 事務局長 増山 周,一般社団法人 映像実演権利者合同機構)
第十五条 放送及び公衆への伝達に関する報酬請求権
実演及びレコードに関する世界知的所有権機関条約
(1) 実演家及びレコード製作者は、商業上の目的のために発行されたレコードを放送又は公衆への伝達のために直接又は間接に利用することについて、単一の衡平な報酬を請求する権利を享有する。
(2) 締約国は、実演家若しくはレコード製作者又はその双方のいずれが利用者に対して単一の衡平な報酬を請求するかについて、その国内法令において定めることができる。締約国は、単一の衡平な報酬を配分する条件について実演家とレコード製作者との間に合意がない場合には、当該条件を定める国内法令を制定することができる。
(3) いずれの締約国も、(1)の規定を特定の利用にのみ適用すること、(1)の規定の適用を他の方法により制限すること又は(1)の規定を適用しないことを、世界知的所有権機関事務局長に寄託する通告において、宣言することができる。
(4) この条の規定の適用上、有線又は無線の方法により、公衆のそれぞれが選択する場所及び時期において利用が可能となるような状態に置かれたレコードは、商業上の目的のために発行されたものとみなす。
また法94条の3 商業用レコードに録音されている実演の放送同時配信等では
商業用レコード(送信可能化されたレコードを含む。次項、次条第一項、第九十六条の三第一項及び第二項並びに第九十七条第一項及び第三項において同じ。)
とかっこ書きに明記されているため94条の3 の商業用レコードでは「送信可能化されたレコード」つまり配信音源も含みます。
参考資料
条解著作権法(小泉直樹他、弘文堂、2023年6月15日
標準著作権法第5版(高林龍、有斐閣、2022年12月28日)
著作権判例百選(第6版)(小泉直樹, 田村善之, 駒田泰土, 上野達弘 有斐閣、2019年3月11日)