著作権法第二条 八 放送

条文

八 放送 公衆送信のうち、公衆によつて同一の内容の送信が同時に受信されることを目的として行う無線通信の送信をいう。

定義

本号の内容

本号では、「放送」を定義しています。放送は著作物利用を含み、著作隣接権の保護対象となっています。

公衆送信のうち

本号に「公衆送信のうち」と記されている通り、放送は「公衆送信」の一形態です。

公衆によって同一の内容の送信が同時に受信されること

放送の概念は平成9年の法改正で整理されました。改正前の定義では、ラジオやテレビの放送に加え、いわゆる「インタラクティブ送信」も含まれていました。インタラクティブ送信とは、情報がサーバーやホストコンピュータに蓄積され、公衆がアクセスすると自動的に公衆の端末に送信されることです

無線と有線が併用される送信の出現など、送信環境の変化により、放送の従来の定義を維持するのが難しくなりました。そこで、平成9年の改正で放送は「同一内容の同時受信」に限定され、それ以外の無線送信は「公衆送信」とされ、インタラクティブ送信は「自動公衆送信」として扱われるようになりました。

「しかしながら、原告らの右主張は、本件番組の右のような実態を挙げて、聴取者が番組プログラムの範囲内において、都合のよい時間帯に好きな楽曲を受信・聴取することができ、聴取者にとってみれば、結果的にリクエスト送信に近い利便性が得られるという事情を指摘するものにすぎず、そのことが、本件番組において、各チャンネルごとに同一の内容の送信が行われ、それが公衆によって同時に受信されているという、送受信の態様に影響を及ぼすものではないから、原告らの右主張は採用できない。」
「著作権法における「放送」に当たるか否かついては、前記のような規定形式からして、その定義規定に明示された送受信の態様のみによって判断すべきものとされていることが一義的に明確であるといえるから、これに当てはまるものは、著作権法上の「放送」に当たるといわざるを得ない。」

(東京地判平成12年5月 16日判時1751号128頁 〔スターデジオ1事件])

本号の放送は公衆に受信されるもので、公衆は「特定かつ多数の者を含む」ため、放送免許を持つ事業者だけでなく、アマチュア無線家が行う放送も法上の放送に含まれる可能性があります。

無線通信の送信

「無線通信」は「有線放送」と対照的な概念として位置付けられており、この用語が使われることで放送が区分されます。さらに、無線通信での送信には、「音声や映像、電気信号に変えられた多様なデータ(情報)」が含まれています。

参考資料

条解著作権法(小泉直樹他、弘文堂、2023年6月15日

標準著作権法第5版(高林龍、有斐閣、2022年12月28日)

著作権判例百選(第6版)(小泉直樹, 田村善之, 駒田泰土, 上野達弘 有斐閣、2019年3月11日)

文化庁「令和5年度著作権テキスト」

タイトルとURLをコピーしました