著作権法第二条 九の五 送信可能化

条文

九の五 送信可能化 次のいずれかに掲げる行為により自動公衆送信し得るようにすることをいう。
イ 公衆の用に供されている電気通信回線に接続している自動公衆送信装置(公衆の用に供する電気通信回線に接続することにより、その記録媒体のうち自動公衆送信の用に供する部分(以下この号において「公衆送信用記録媒体」という。)に記録され、又は当該装置に入力される情報を自動公衆送信する機能を有する装置をいう。以下同じ。)の公衆送信用記録媒体に情報を記録し、情報が記録された記録媒体を当該自動公衆送信装置の公衆送信用記録媒体として加え、若しくは情報が記録された記録媒体を当該自動公衆送信装置の公衆送信用記録媒体に変換し、又は当該自動公衆送信装置に情報を入力すること。
ロ その公衆送信用記録媒体に情報が記録され、又は当該自動公衆送信装置に情報が入力されている自動公衆送信装置について、公衆の用に供されている電気通信回線への接続(配線、自動公衆送信装置の始動、送受信用プログラムの起動その他の一連の行為により行われる場合には、当該一連の行為のうち最後のものをいう。)を行うこと。

定義

本号の概要

本号は送信可能化の定義をしています。公衆送信の一種に自動公衆送信があります、これは公衆のリクエストに応じて自動的に行われる送信です。著作物がリクエストに応じて自動的に送信される状態にあっても、実際に送信されるまでは自動公衆送信にあたる行為は生じていません。インターネット上での送信では、どの著作物がいつどこに送信されたかを権利者が把握するのは難しいです。そのため、自動公衆送信に関する権利を実効的に保護するために、送信可能化の概念が導入されました。著作権では、第23条1項において、「公衆送信(自動公衆送信の場合にあつては、送信可能化を含む。)」と明示されており、著作隣接権では、各隣接権者に送信可能化権が規定されています。

次のいずれかに掲げる行為により自動公衆送信し得るようにすることをいう

本号では、送信可能化を、イまたはロのいずれかに掲げる行為を行うことで自動公衆送信が可能となる状態にすることとして定義しています。そのため、送信可能化に該当するためには、イまたはロによって可能とされる送信が自動公衆送信であることが必要であります。また、イとロは、どちらも自動公衆送信装置に関する行為として定義されています。

本号イ

公衆の用に供されている電気通信回線に接続している

電気通信回線は、情報(データ)を電磁的に送受信するための伝送路を指し、例としてインターネット回線があります。これは無線であれ有線であれ関係ありません。電気通信回線が公衆の用に供されているとは、不特定または特定多数の人々が利用できる状態にあることを意味します。一般の回線だけでなく、会社内や建物内のLANのような限定された範囲で使用されるネットワークも電気通信回線に当たり、これらが公衆の用に供されている場合は、本要件を満たしていると考えられます。

「利用者がビューワーにより録画予約の指示をすることにより,控訴人商品のサーバーに,放送番組に係る情報が記録され,これによって,当該情報が自動公衆送信し得るようになるのであるから,控訴人商品のサーバーのハードディスクに放送番組が録画されることにより,その放送は「送信可能化」されるということができる。」
「公衆の用に供されている電気通信回線に接続している自動公衆送信装置の公衆送信用記録媒体に,情報を記録することによって自動公衆送信し得るようにすることも,「送信可能化」として定義されているのであるから,この点の控訴人の主張は採用できない。」

(大阪高判平成19年6月14日判時1991号122頁 〔選撮見録事件: 控訴審〕)

自動公衆送信装置

自動公衆送信装置とは本号のかっこ書きで「公衆の用に供する電気 通信回線に接続することにより、 その記録媒体のうち自動公衆送信の用に供する部分に記録され、 又は当該装置に入力される情報 を自動公衆送信する機能を有する装置」とされている。
これには、ウェブサーバなどの特定のコンピューターが自動公衆送信の機能を持っている場合、自動公衆送信装置に該当します。これには個人が使用するパーソナルコンピューターが自動公衆送信装置に含まれる場合もあります。
また、公衆送信用記録媒体とは、その装置の記録媒体のうち、自動公衆送信の対象となるデータが記録されている記録媒体の領域を指します。

「公衆の用に供されている電気通信回線に接続することにより, 当該装置に入力される情報を受信者からの求めに応じ 自動的に送 信する機能を有する装置は, これがあらかじめ設定され た単一の機器宛てに送信する機能しか有しない場合であっても,当該装置を用いて行われる送信が自動公衆送信であるといえるときは, 自動公衆送信装置に当たるというべきである。 」

(最高裁平成23年1月 18日第三小法廷判決 〔まねきTV事件:上告審〕)


「したがって,電子ファイルを共有フォルダに蔵置したまま債務者サーバに接続して上記状態に至った送信者のパソコンは,債務者サーバと一体となって情報の記録された自動公衆送信装置(法2条1項9号の5イ)に当たるということができ,また,その時点で,公衆の用に供されている電気通信回線への接続がされ,当該電子ファイルの送信可能化(同号ロ)がされたものと解することができる。」

(東京地決平成14年4月11日判 時 1780号25頁 〔ファイルローグ仮処分事件〕)

送信可能化に該当する行為

送信可能化とは公衆の用に供されている電気通信回線に接続している自動公衆送信装置に対して
以下の行為をすることと定義されている

①:公衆送信用記録媒体に情報を記録
②:情報が記録された記録媒体を当該自動公衆送信装置の公衆送信用記録媒体として加える
③:若しくは情報が記録された記録媒体を当該自動公衆送信装置の公衆送信用記録媒体に変換
④:当該自動公衆送信装置に情報を入力すること

本号ロ

情報が記録されている自動公衆送信装置をネットワークに接続する行為は送信可能化に該当すると定義されています。
公衆送信用記録媒体に記録された情報、または当該自動公衆送信装置に入力された情報が自動公衆送信装置について、公衆の用に供されている電気通信回線へ接続することが送信可能化に該当します。

電気通信回線への接続は、「配線、自動公衆送信装置の始動、送受信用プログラムの起動その他の一連の行為により行われる場合には、当該一連の行為のうち最後のものをいう。」が接続行為とされています。

参考資料

条解著作権法(小泉直樹他、弘文堂、2023年6月15日

標準著作権法第5版(高林龍、有斐閣、2022年12月28日)

著作権判例百選(第6版)(小泉直樹, 田村善之, 駒田泰土, 上野達弘 有斐閣、2019年3月11日)

文化庁「令和5年度著作権テキスト」

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