著作権法 第47条の5 電子計算機による情報処理及びその結果の提供に付随する軽微利用等

条文

電子計算機を用いた情報処理により新たな知見又は情報を創出することによつて著作物の利用の促進に資する次の各号に掲げる行為を行う者(当該行為の一部を行う者を含み、当該行為を政令で定める基準に従つて行う者に限る。)は、公衆への提供等(公衆への提供又は提示をいい、送信可能化を含む。以下同じ。)が行われた著作物(以下この条及び次条第二項第二号において「公衆提供等著作物」という。)(公表された著作物又は送信可能化された著作物に限る。)について、当該各号に掲げる行為の目的上必要と認められる限度において、当該行為に付随して、いずれの方法によるかを問わず、利用(当該公衆提供等著作物のうちその利用に供される部分の占める割合、その利用に供される部分の量、その利用に供される際の表示の精度その他の要素に照らし軽微なものに限る。以下この条において「軽微利用」という。)を行うことができる。ただし、当該公衆提供等著作物に係る公衆への提供等が著作権を侵害するものであること(国外で行われた公衆への提供等にあつては、国内で行われたとしたならば著作権の侵害となるべきものであること)を知りながら当該軽微利用を行う場合その他当該公衆提供等著作物の種類及び用途並びに当該軽微利用の態様に照らし著作権者の利益を不当に害することとなる場合は、この限りでない。

一 電子計算機を用いて、検索により求める情報(以下この号において「検索情報」という。)が記録された著作物の題号又は著作者名、送信可能化された検索情報に係る送信元識別符号(自動公衆送信の送信元を識別するための文字、番号、記号その他の符号をいう。第百十三条第二項及び第四項において同じ。)その他の検索情報の特定又は所在に関する情報を検索し、及びその結果を提供すること。

二 電子計算機による情報解析を行い、及びその結果を提供すること。

三 前二号に掲げるもののほか、電子計算機による情報処理により、新たな知見又は情報を創出し、及びその結果を提供する行為であつて、国民生活の利便性の向上に寄与するものとして政令で定めるもの

2 前項各号に掲げる行為の準備を行う者(当該行為の準備のための情報の収集、整理及び提供を政令で定める基準に従つて行う者に限る。)は、公衆提供等著作物について、同項の規定による軽微利用の準備のために必要と認められる限度において、複製若しくは公衆送信(自動公衆送信の場合にあつては、送信可能化を含む。以下この項及び次条第二項第二号において同じ。)を行い、又はその複製物による頒布を行うことができる。ただし、当該公衆提供等著作物の種類及び用途並びに当該複製又は頒布の部数及び当該複製、公衆送信又は頒布の態様に照らし著作権者の利益を不当に害することとなる場合は、この限りでない。

第47条の5 電子計算機による情報処理及びその結果の提供に付随する軽微利用等

本条の概要

 本条はデジタル化・ネットワーク化で急変する著作物の利用行為に対応するため、2018年(平成30年)改正で導入された権利制限「柔軟な権利制限規定」のうちの1つです。元々検索エンジンに関する権利制限規定は改正前にもインターネット検索に関する旧47条の6「送信可能化された情報の送信元識別符号の検索等のための複製等」と旧47条の7の「情報解析のための複製等」が存在していました。しかし、改正前の権利制限規定はあくまで個別具体的な利用方法の列挙だけ行われていて法律の要件から外れた新たな技術による著作物の利用行為は権利制限規定の適用を受けられない可能性がありました。そのために拾いきれない新サービスにも適切に適用できるよう、抽象度と明確性のバランスを取った“多層的”な権利制限規定の設計が行われ法律の整備が行われました。(30条の4、47条の4、47条の5)。

現在我が国では,IoT・ビッグデータ・人工知能(AI)等の「第4次産業革命」に関する技術を活用したイノベーションの創出が期待されているところ,改正前の著作権法の権利制限規定には,法律上の要件が一定程度具体的に定められているものが多く,その要件から外れるような新たな利用方法が生まれた場合には,実質的には権利者の 利益を害しないような利用であっても,その権利制限規定の適用を受けられずに著作権侵害となるおそれが指摘されてきた。 このような状況を受け,産業界等から,イノベーション創出のため,新技術を活用した 新たな著作物の利用にも柔軟に対応できる権利制限規定の整備が求められてきたため,規定の抽象度を高めた「柔軟な権利制限規定」を整備することとした。

令和元年10月24日,文化庁著作権課「デジタル化・ネットワーク化の進展に対応した 柔軟な権利制限規定に関する基本的な考え方 (著作権法第30条の4,第47条の4及び第47条の5関係)」,1頁

 

そして様々な検討の結果、平成29(2017)年4月の文化審議会著作権分科会報告書(https://www.bunka.go.jp/seisaku/bunkashingikai/chosakuken/pdf/h2904_shingi_hokokusho.pdf)では、日本国内での法制度の現状から見ても、米国のフェア・ユース規定のような極めて柔軟性が高い一般的・包括的な規定を新設するのではなく、明確性・具体性を持ちつつも抽象的・柔軟性のある適切なバランスを備えた複数の個別的な権利制限規定の組合せによる「多層的」な対応が適当であると結論づけました。具体的には、権利者への不利益の度合い等に応じて権利制限規定を三つの「層」に分類し、それぞれに見合った柔軟な権利制限規定を整備する方針となりました。

出典:著作権法の一部を改正する法律 概要説明資料

(1)第1層は、「著作物の本来的利用には該当せず,権利者の利益を通常害さないと評価できる行為類型」であり、「柔軟性の高い規定」を整備することが適切とされました。

(2)第2層は、「著作物の本来的利用には該当せず,権利者に及び得る不利益が軽微な行為類型」であり、「相当程度柔軟性のある規定」を整備することが適切とされました。

(3)第3層は、「公益的政策実現のために著作物の利用の促進が期待される行為類型」「適切な明確性と柔軟性の度合い」を検討することが適切とされました。(『平成29(2017)年4月の文化審議会著作権分科会報告書』38頁~39頁)

そして著作権法第47条の5の「電子計算機による情報処理及びその結果の提供に付随する軽微利用等」は検索・情報解析サービスなどに伴う著作物の利用行為を広く対象としています。これらの電子計算機を用いた情報処理により新たな知見又は情報を創出するサービスは社会的意義が認められ、このサービスの提供に付随して軽微な形での著作物の利用が行われても著作物を視聴鑑賞などで享受させる本来の利用市場への影響は少なく、権利者へ与える不利益は軽微なものに限定されると評価されました。そのため、本条はこの権利制限規定の第2層に分類され「著作物の本来的利用には該当せず,権利者に及び得る不利益が軽微な行為類型」とされています。

本条の構成は1項がサービス提供時の軽微利用であり、2項がその準備行為を規定する構成になっています。

所在検索・情報解析・その他政令で定めるサービスに伴う軽微利用(1項)

本条1項では「電子計算機を用いた情報処理により新たな知見又は情報を創出することによつて著作物の利用の促進に資する」行為として1号から3号まで本条1項の適用対象となる行動類型(サービス)を規定しています。他の柔軟性のある権利制限規定(30条の4や47条の4)は各号が例示列挙となっていますが、本条の場合は各号が限定列挙となっており異なっている点は注意です。その理由として権利者に軽微な範囲ではあるものの不利益を及ぼし得ることが想定されることを踏まえ、一定の明確性・予測可能性を確保することを求められるから、各号において限定列挙することとしております。(加戸守行. (2021年12月21日). 『著作権法逐条講義(七訂新版)』. 公益社団法人著作権情報センター,415頁)

 また各号に規定されている行為を複数の事業者で分担することも考えられ、かっこ書きに「当該行為の一部を行う者を含み」とあるため各分担者にも47条の5が適用される利用行為の主体に含まれる可能性もあります。

 本条1項のかっこ書きには「当該行為を政令で定める基準に従つて行う者に限る。」と規定されています。そのため、法47条の5が適用される利用には政令・省令で定められた運用上の基準を満たす必要があります。現時点で47条の5に寒冷する政令には著作権法施行令7条の4と省令として著作権法施行規則4条の5があります。

法第四十七条の五第一項(法第八十六条第一項及び第三項並びに第百二条第一項において準用する場合を含む。第三号において同じ。)の政令で定める基準は、次のとおりとする。
一 送信可能化された検索情報に係る送信元識別符号を検索し、及びその結果を提供する行為(ロ及び次項第一号において「送信元識別符号検索結果提供」という。)を行う場合にあつては、次に掲げる要件に適合すること。
イ 送信可能化された著作物等に係る自動公衆送信について受信者を識別するための情報の入力を求めることその他の受信を制限するための手段が講じられている場合にあつては、当該自動公衆送信の受信について当該手段を講じた者の承諾を得たものに限つて利用を行うこと。
ロ イに掲げるもののほか、送信元識別符号検索結果提供を適正に行うために必要な措置として文部科学省令で定める措置を講ずること。
二 法第四十七条の五第二項(法第八十六条第一項及び第三項並びに第百二条第一項において準用する場合を含む。次項において同じ。)の規定の適用を受けて作成された著作物等の複製物を使用する場合にあつては、当該複製物に係る情報の漏えいの防止のために必要な措置を講ずること。
三 前二号に掲げるもののほか、法第四十七条の五第一項各号に掲げる行為に係る著作物等の利用を適正に行うために必要な措置として文部科学省令で定める措置を講ずること。
2 法第四十七条の五第二項の政令で定める基準は、次のとおりとする。
一 送信元識別符号検索結果提供の準備を行う場合にあつては、当該送信元識別符号検索結果提供を前項第一号に掲げる要件に適合させるために必要な措置を講ずること。
二 法第四十七条の五第二項の規定の適用を受けて作成された著作物等の複製物に係る情報の漏えいの防止のために必要な措置を講ずること。

著作権法施行令 第7条の4

 令第七条の四第一項第一号ロの文部科学省令で定める措置は、次に掲げる行為のいずれかが送信元識別符号検索結果提供を目的とする情報の収集を禁止する措置に係る一般の慣行に従つて行われている場合にあつては、当該行為に係る情報の提供を行わないこととする。
一 robots.txtの名称の付された電磁的記録で送信可能化されたものに次に掲げる事項を記載すること。
 イ 送信元識別符号検索結果提供を目的とする情報の収集のためのプログラムのうち情報の収集を禁止するもの
 ロ 送信元識別符号検索結果提供を目的とする情報の収集において収集を禁止する情報の範囲
二 HTML(送信可能化された情報を電子計算機による閲覧の用に供するに当たり、当該情報の表示の配列その他の態様を示すとともに、当該情報以外の情報で送信可能化されたものの送信の求めを簡易に行えるようにするための電磁的記録を作成するために用いられる文字その他の記号及びその体系であつて、国際的な標準となつているものをいう。第二十五条において同じ。)その他これに類するもので作成された電磁的記録で送信可能化されたものに送信元識別符号検索結果提供を目的とする情報の収集を禁止する旨を記載すること。  

著作権法施行規則 (送信元識別符号検索結果提供を適正に行うために必要な措置) 第四条の四 

利用対象である公衆提供著作物

 「公衆提供等著作物」は、著作権法47条の5でいう「公衆への提供等(公衆への提供又は提示をいい、送信可能化を含む。)が行われた著作物」のことを指します。ここでの「提供等」には、①有体物として公衆への提供(例:譲渡・貸与・頒布)を行うことと、②無体物として公衆への提示(例:上演・演奏・上映・公衆送信・伝達・口述・展示等)を行うことだけではなく、③ネット上でアクセス可能な状態に置く送信可能化段階までも含めて扱います。また「提供などが行われた著作物」と明記されていますので本条第1項の利用時点では提供などがされていない著作物であっても過去提供などされていれば該当することになります。

 権利者から無許諾で公衆への提供等を行った著作物も公衆提供等著作物に該当しますが本条第1項で対象となる「公衆提供等著作物」は、そのうち「公表された著作物または送信可能化された著作物」に限定されます。また「公表」とは、著作権者(または許諾を得た者)によって行われる必要があり無許諾で公衆への提供などを行った場合は本条第1項に該当しません。ただし送信可能化の場合は著作権者などに無許諾で著作物がインターネット上で公開された場合でも本条第1項の適用対象になります。送信可能化された著作物については、基本的に既にインターネット上に広く公開されている情報であり、仮に権限のない者によって送信可能化されたもの、すなわち公表された著作物には該当しないものであったとしても、本項に規定する軽微利用を認めることによって公表権侵害の度合いが大きく高まるとは考えられないから(加戸守行. (2021年12月21日). 『著作権法逐条講義(七訂新版)』. 公益社団法人著作権情報センター,416頁)

 つまりこれは未公表の有体物に化体している著作物の情報を提供する場合は著作権者への不利益の程度は多いと考えられますがインターネット上にすでに公開されている著作物の情報を提供する場合は多くの場合はすでに大衆はアクセスできる状態であると考えられるため著作権者への不利益の程度は少ないとされるからです。

認められている著作物の利用行為

 法47条の5第1項にすべての支分権の対象となる著作物の利用行為について著作権者に無許諾で行うことができます。ただし、以下の必要性・付随性・適用要件を満たす必要があります。これを満たせば本条1項では「いずれの方法によるかを問わず、利用を行うことができる。」とあり、複製に限らず、公衆送信、譲渡、上映、翻訳・翻案等の二次的著作物の創作、これにより創作された二次的著作物の利用等、支分権の対象となる行為は全て権利制限の対象となっております。(加戸守行. (2021年12月21日). 『著作権法逐条講義(七訂新版)』. 公益社団法人著作権情報センター,417頁)

必要性

 「当該各号に掲げる行為の目的上必要と認められる限度」と記述されている通り、本条1項各号に掲げる行為の目的上必要と認められる限度内で利用しなければいけません。この必要性の要件を満たさない場合は利用がただし書きに該当するかは関係無く本条1項は適用されなくなります。

付随性

 「当該行為に付随して」と記述されている通り、本条1項各号に掲げる行為に付随する著作物の利用行為である必要があります。具体的には、各号に掲げる行為(例えば、インターネット情報検索サービスでは、検索結果としてのURL(情報処理の結果)の提供)と、著作物の利用(例えば、インターネット情報検索サービスでは、スニペットやサムネイル(著作物の提供)をそれぞれ区分して捉えた上で、前者が主たるもの、後者が従たるものという位置付けであることが求められます。(加戸守行. (2021年12月21日). 『著作権法逐条講義(七訂新版)』. 公益社団法人著作権情報センター,417頁)各号に掲載されている行為と著作物の利用行為で分け各号掲載されている行為に付随する形で著作物の利用行為が行われる必要があります。そのため各号掲載行為と著作物の利用行為が必ず区別されている必要があります。

 例えばウェブサイト検索サービスにおけるスニペット表示など、本条1項1号に掲げる所在検索サービスの検索・提供行為に該当するウェブサイト検索サービスに付随して著作物の利用行為に該当するスニペット表示が行われていなければいけません。

軽微性

 さらに利用についてはかっこ書きに(当該公衆提供等著作物のうちその利用に供される部分の占める割合、その利用に供される部分の量、その利用に供される際の表示の精度その他の要素に照らし軽微なものに限る。)とある通り軽微である必要があります。著作物の利用範囲が軽微なものにとどめられれば、基本的に著作権者が当該著作物を通じて大家の獲得を期待している本来的な販売市場等に影響を与えず、ライセンス使用料に係る不利益についても、その度合いは小さなものに留まるものと考えられましょう。(加戸守行. (2021年12月21日). 『著作権法逐条講義(七訂新版)』. 公益社団法人著作権情報センター,414頁)この軽微性に関しては以下の4つの要素から総合考慮で判断します。1つ目は利用対象の著作物の中で利用される部分が、著作物全体に占める割合です。これに関しては他の要素とは異なり比較対象が条文に明示されているため判断基準がある程度明確です。2つ目は利用対象の著作物の中で利用される部分の量です。3つ目は利用対象の著作物が表示される際の精度です。4つ目は1つ目から3つ目以外のその他の要素であす。具体的に、「公衆提供等著作物のうちその利用に供される部分の占める割合」は、例えば、楽曲であれば、全体の演奏時間のうち何パーセントに当たる時間が利用されているか、「その利用に供される部分の量」は、例えば小説であれば、どの程度の文字数が利用されているか、「その利用に供される際の表示の精度」は、例えば写真の画像データであれば、どの程度の画素数で利用されているか、「その他の要素」としては、例えば紙媒体での「表示の大きさ」などが想定され、写真の紙面への掲載であれば、何平方センチメートルの大きさで利用されているか、といったことをそれぞれ意味するものと考えられます。(加戸守行. (2021年12月21日). 『著作権法逐条講義(七訂新版)』. 公益社団法人著作権情報センター,417頁)

 軽微性は、利用態様の客観的・外形的・類型的な要素に基づいて著作権者に与える不利益から軽微か否かを判断し、主観的な公益性では判断されません。世界中のネット情報を検索するに際し、個々的に権利者の不利益を判断することは不可能であるからである。(中山信弘. (2014年10月25日). 『著作権法(第4版)』. 有斐閣.495頁)

 例えば検索エンジンの場合であれば、書籍情報や、数行程度の提示、スニペット、サムネイル程度であれば軽微といえるであろうが、相当長いページを提示すれば違法となる可能性が高いだろう。(中山信弘. (2014年10月25日). 『著作権法(第4版)』. 有斐閣.495頁)

ただし書き

 本条1項のただし書きには2つの構成があります。

・当該公衆提供等著作物に係る公衆への提供等が著作権を侵害するものであることを知りながら当該軽微利用を行う場合

・その他当該公衆提供等著作物の種類及び用途並びに当該軽微利用の態様に照らし著作権者の利益を不当に害することとなる場合

 この2つの場合です。この2つは「その他」で結ばれている並列的明示であり、前者と後者は並列関係にあります。

知りながら軽微利用

 著作権法47条の5第1項ただし書では、公衆提供等著作物に係る公衆への提供等が著作権を侵害するものであることを知りながら軽微利用を行う場合には、同条1項が適用されなくなるという趣旨の規定です。

 ここでいう「公衆提供等著作物に係る公衆への提供等が著作権を侵害するものであること」とは、著作物が公表され、または送信可能化されている場合に、その著作物を公衆に提供する行為自体が著作権侵害であることを意味します。例えば、市販の映画や音楽が違法にアップロードされたもの(海賊版)について、それが海賊版であると知りながら軽微利用に供する行為には、本条の権利制限の適用はございません。(加戸守行. (2021年12月21日). 『著作権法逐条講義(七訂新版)』. 公益社団法人著作権情報センター,418頁)

 もっとも、「知りながら」とは、実際に侵害であることを知っているという場合を指し、「知るべきであった」場合までは含まれません。そのため、利用者に対して、利用する行為が著作権侵害にならないかを調査する義務が課されるわけではありません。知らなかった場合には、注意義務違反として過失があったかどうかは、このただし書の適用判断では問題となりません。

 では、どの程度の認識があれば「知りながら」に当たるのか。この点については、著作権法113条1項2号の「情を知って」に関する裁判例を参考に、少なくとも仮処分や裁判での判決など、公的権力による判断によって侵害であることが示されている場合には、「知りながら」に該当すると考えられます。また、プロバイダ責任制限法のガイドラインに基づく通知がなされた場合も、「知りながら」に該当し得ると指摘されている学説も存在します。

権利者の利益を不当に害する軽微利用

著作権法47条の5第1項ただし書にいう「その他当該公衆提供等著作物の種類及び用途並びに当該軽微利用の態様に照らし著作権者の利益を不当に害することとなる場合」とは、同条1項による権利制限の適用を除外するための規定です。

法第47条の5第1項ただし書では,著作権者の利益が不当に害されることとなる場合には,権利制限の適用を受けないことを定めており,これに該当するか否かは,同様のただし書を置いている他の権利制限規定と同じく,著作権者の著作物の利用市場と衝突するか、あるいは将来における著作物の潜在的販路を阻害するかという観点から,最終的には司法の場で具体的に判断されることになる。

(令和元年10月24日 文化庁著作権課『デジタル化・ネットワーク化の進展に対応した 柔軟な権利制限規定に関する基本的な考え方 (著作権法第30条の4,第47条の4及び第47条の5関係)』24頁)

 これは当該利用行為が著作権者の著作物利用市場と衝突するか、または将来における著作物の潜在的販路を阻害するかという観点から判断されます。すなわち、著作権者の著作物の売上や利用許諾による収益に対して、利益を不当に害するほどの負の影響を及ぼすか否かが問題となります。

 もっとも、法47条1項に基づく利用が認められる場合であっても、著作物が実際に利用されている以上、著作権者の著作物の利用市場との間に一定の競合や衝突が生じてしまうことは避けられません。したがって、利用市場との衝突や売上げへの影響が少しでも存在することを理由として直ちにただし書に該当し適用除外されるようになるのは、本条1項によって著作物の利用を認めた趣旨が失われることになります。本条1項が成立している以上、一定程度の市場への影響は制度上織り込み済みであると判断することが妥当と考えられます、問題となるのは、但し書きの内容通り本条1項の趣旨に照らしてなお「不当」と評価できる程度の不利益が著作権者に生じているかで判断されます。この該当性は、他の権利制限規定に置かれた同様のただし書と同じく、最終的には個別具体的な状況に応じて司法の場で判断されることになるでしょう。

 この点、47条の5第1項は、著作物の利用について、前述の通り必要性、付随性、軽微性といった権利制限規定の適用要件を課しています。これらの適用要件はいずれも、著作権者に生じる不利益を限定する意図があります。そのため、これらの要件をすべて満たし本条1項が適用されるような著作物の利用について、ただし書該当によって著作権者の利益を不当に害すると評価され適用除外になる場面は、通常は限定的であると考えられます。

 ただし著作物の性質や利用態様によっても著作物の一部利用にとどまる場合でも著作権者の著作物の利用市場に実質的な悪影響を与えるケースも考えられ、『例えば,辞書のように複数ある語義のうち一部のみでも確認されれば本来の役割を果たすような著作物について当該一部を表示することや,映画の核心部分のように一般的に利用者の有している当該著作物の視聴等にかかわる欲求を充足するような著作物について当該核心部分を著作物の一部分として表示することは,そのオリジナルの著作物の視聴等に係る市場に悪影響を及ぼし得ることから,利用の態様によっては,同項ただし書に該当することとなり,同項の権利制限の対象とならないものと考えられる。』(令和元年10月24日 文化庁著作権課『デジタル化・ネットワーク化の進展に対応した 柔軟な権利制限規定に関する基本的な考え方 (著作権法第30条の4,第47条の4及び第47条の5関係)』24頁)など例に挙げられています。

 また、軽微利用についてライセンス市場が存在する、または将来的に形成され得ることのみを理由として、ただし書に該当し適用除外になると解釈されるべきではありません。47条の5第1項に該当する軽微利用は、法による一定範囲での権利制限を認めた利用ですので、そのような利用について、権利者側がライセンス市場を形成したことをもって当然に著作権者の利益侵害を基礎づけるとすれば、権利制限規定の意義が失われることになる。したがって、著作権者の利益とは著作権に基づく利益を意味すると解した上で、著作権が本来及ばない、または制限されるべき利用について、単にライセンス市場の存在や発展を理由としてただし書に該当すると考えることは妥当とはいえません。

 なお、ただし書に掲げられている各要素について、それぞれ独立した絶対的な判断基準が存在すると捉えるべきではありません。著作物の種類・用途、利用の態様、利用される部分の量や質、著作権者の市場に与える影響の程度、将来の潜在的販路への影響などの要素は、相互に関連し合うものとされています。したがって、著作権者の利益を不当に害するか否かは、特定の一要素のみで機械的に判断するのではなく、当該利用の具体的事情を総合的に考慮して判断されるべきです。

所在検索サービス(1号)

 本条1項1号は、「所在検索サービス」に関することです。電子計算機、つまりコンピュータを用いて、「検索情報」が記録された著作物を検索し、著作物の題号、著作者名、該当URL(条文では送信元識別符号=自動公衆送信の送信元を識別するための文字、番号、記号その他の符号)などその他、検索情報の特定または所在に関する情報を検索・提供する行為を対象とします。

 典型例は、インターネット検索エンジン等による検索結果の提示です。ウェブ検索で特定テーマの調べものをする場合、「検索情報」はそのテーマに関する情報であり、結果として提示される各ウェブサイト名やサイト内の情報は「検索情報の特定」URLは「所在に関する情報」に該当します。書籍検索では、検索情報はそのテーマを扱う書籍で、書名や著者名が「検索情報の特定」、所蔵図書館名や書架番号が「所在に関する情報」となります。楽曲検索でも同様に、調べたい楽曲が「検索情報」曲名・アーティスト名(検索情報の特定)や配信先URL等(所在に関する情報)を提示する形が想定されています。

 提供できる結果は「検索情報の特定または所在に関する情報」に限られます。すなわち、本文やコンテンツ自体の提供ではなく、利用者が該当するコンテンツに到達するための手掛かり、メタ情報などの提示が想定されています。条文上は、「検索情報に係る送信元識別符号」として、自動公衆送信の発信元を識別する符号(URL等)も検索対象に含まれることが明記されており、URLそのものを対象とした検索・提示も含まれます。具体的には、URLとともに数行の抜粋を示すスニペットやサムネイル等が許されていた。(中山信弘. (2014年10月25日). 『著作権法(第4版)』. 有斐閣.497頁)

 本号の目的は、著作物そのものを提供することはなくても、利用者が目的の情報へ到達できるよう案内することで、本条の柱書に含まれる「著作物の利用の促進に資する」点にあります。

 本号が成立する要件として重要なのは、検索が電子計算機(コンピュータ)によって行われることです。人間による検索が主体である場合は本号には該当しません。しかし検索の処理過程の一部に人間による人手作業が含まれている場合でも本号は該当します。また、条文では「その結果を提供すること」。と記述されていますが、第三者への提供に限らず、自己の利用のための検索利用も本号に該当します。

 また、本号では必ずしも検索や結果提供がユーザーの入力の必要はありません。システム側で自動的に検索・提供を行う仕組みや、プッシュ型のサービスも、本号に該当すると考えられます。

情報解析サービス(2号)

著作権法47条の5第1項第2号の「情報解析サービス」は、コンピュータによる情報解析を行い、その解析結果を利用者に提供するサービスを対象とします。法30条の4の2号の情報解析が「情報解析」そのものの利用を想定するのに対し、本号は「情報解析」だけではなくその「結果提供」の場面でも、著作物の利用に対して適用される点に特徴があります。例えば川端康成の小説の中である特定の文字がどの程度用いられているか、現在のウェブサイトにはどのような言葉が多用されているか、といいうことを調べるためには該当著作物の全文を、あるいは論文剽窃検索サービスを行うためには剽窃をされる可能性のある著作物の全文を電子計算機内に蓄積(複製)した上で解析をする必要がある。(中山信弘. (2014年10月25日). 『著作権法(第4版)』. 有斐閣.499頁)

大量の論文・テキスト等を解析して統計情報や知見、傾向や関係性の可視化などを返すサービス、論文の剽窃部分を検知し提示する論文剽窃検証サービス、症状入力に応じて病名・治療法を提案する医療支援サービスなどが典型例です。また、AIが推論結果を提示する際に機械学習の対象物やRAG(検索拡張生成)などでの参照対象の著作物の一部分を出力する形態も、本条1項2号が適用される可能性があります。

その他政令で定めるサービス(3号)

 著作権法47条の5第1項3号「その他政令で定めるサービス」は、所在検索サービス(1号)・情報解析サービス(2号)には該当しないような将来の技術発展に合わせて、新サービスでも技術進歩に合わせて政令指定によって本条に適用できるようにした規定です。対象となり得るのは、

①本条1項1号・2号に当てはまらないこと

 現時点で本条1項1号と2号は抽象的かつ広範囲のサービスに適用されるためこの2つに該当しないサービスとなると限られることになります。

②電子計算機による情報処理で新たな知見または情報を創出すること

 電子計算機による情報処理と評価されるサービス限定ですので人間による情報処理を行うサービスには該当しません。ただし、電子計算機による情報処理の過程の中でその一部の作業を人間が行っている場合でも除外されるわけではありません。

 その他にも③その結果を提供する行為であること④国民生活の利便性向上に寄与するもの。に該当するサービスである必要があります。

 文化庁は第3号の政令制定検討に向け2018年にニーズ募集も実施しましたが、現時点で政令指定されたサービスはありません。

情報検索などの準備のための利用(2項)

 本条2項は、同条1項各号で認められる「所在検索サービス」「情報解析サービス」「その他政令で定めるサービス」などの軽微利用・結果提供を実際に行うため、その前段階で必要になる著作物の収集、整理、データベース化、提供などに関する利用行為を認める規定です。中心にある発想としては、「本条1項で最終的に表示・提示される著作物の利用は軽微だったとしても、その準備には大量の著作物の複製やデータベース化が必要になる」という点です。

 たとえば、検索サービスで数行のスニペットを表示するだけであっても、その準備としては書籍やウェブページをスキャン・クローリングなどで収集し、検索用データベースを作る必要があります。例として書籍検索サービスで書籍をスキャンして電子データ化し、検索用データベースを作成する行為や、別事業者が検索用データベースを検索サービス事業者に頒布する行為を例に挙げています。情報を収集・整理してデータベースを作成する行為、データセットを作成し複製・公衆送信(自動公衆送信の場合は送信可能化も含める)・頒布する行為が可能になります。

 利用行為の主体については、本条1項各号に掲げる行為の準備を行う者であり、かっこ書きに当該行為の準備のための情報の収集、整理及び提供を政令で定める基準に従って行う者に限るとあります。本条1項各号の行為の準備として、情報の収集・整理・提供を政令で定める基準に従って行う者に限られます。ただし、準備を行う者が実際に検索サービスや情報解析サービスを提供する本人である必要はありません。本条1項の行為者と同条2項の準備行為者は同一でも別人でもよく、別事業者が検索・解析用データを収集して提供することも可能としています。

 政令上の基準として重要なのは、データベースに関する情報漏洩防止措置などです。著作権法施行令7条の4により、使用するデータベースについて情報漏洩防止措置を講じることが求められます。また、インターネット情報検索サービスの準備の場合には、ID・パスワードで受信が制限された情報や、収集禁止措置が取られた情報を使用しないなどの措置も必要になります。

法第四十七条の五第一項(法第八十六条第一項及び第三項並びに第百二条第一項において準用する場合を含む。第三号において同じ。)の政令で定める基準は、次のとおりとする。
一 送信可能化された検索情報に係る送信元識別符号を検索し、及びその結果を提供する行為(ロ及び次項第一号において「送信元識別符号検索結果提供」という。)を行う場合にあつては、次に掲げる要件に適合すること。
イ 送信可能化された著作物等に係る自動公衆送信について受信者を識別するための情報の入力を求めることその他の受信を制限するための手段が講じられている場合にあつては、当該自動公衆送信の受信について当該手段を講じた者の承諾を得たものに限つて利用を行うこと。
ロ イに掲げるもののほか、送信元識別符号検索結果提供を適正に行うために必要な措置として文部科学省令で定める措置を講ずること。
二 法第四十七条の五第二項(法第八十六条第一項及び第三項並びに第百二条第一項において準用する場合を含む。次項において同じ。)の規定の適用を受けて作成された著作物等の複製物を使用する場合にあつては、当該複製物に係る情報の漏えいの防止のために必要な措置を講ずること。
三 前二号に掲げるもののほか、法第四十七条の五第一項各号に掲げる行為に係る著作物等の利用を適正に行うために必要な措置として文部科学省令で定める措置を講ずること。
2 法第四十七条の五第二項の政令で定める基準は、次のとおりとする。
一 送信元識別符号検索結果提供の準備を行う場合にあつては、当該送信元識別符号検索結果提供を前項第一号に掲げる要件に適合させるために必要な措置を講ずること。
二 法第四十七条の五第二項の規定の適用を受けて作成された著作物等の複製物に係る情報の漏えいの防止のために必要な措置を講ずること。

著作権法施行令 第7条の4  

公衆提供等著作物

 本条2項で利用の対象となる著作物は「公衆提供等著作物」です。ここで重要なのは、同条1項とは違い、「公表された著作物又は送信可能化された著作物」に限定されていない点です。つまり未公表の著作物が著作権者に無断で公衆に提供や提示された場合でも本条2項で利用できます。所在検索サービスや情報解析サービスの準備行為では大量の著作物を扱うため、個々の著作物が公表済みか、そうでないかを確認するのは技術的・経済的に困難であることを理由に挙げています。

 ただし、まったく公衆に提供・提示されていない、私的領域にとどまる著作物まで対象になるとは考えられません。このような私的領域限定の著作物については、本条2項による権利制限の対象とする必要性が乏しいため、ここでは公衆提供等著作物に限定されていると考えられます。一方で、過去に1度でも公衆への提供または提示が行われていれば、例えば絶版書籍などで現在は通常の流通がなくても本条2項の対象になり得ます。

認められている利用行為

認められる著作物の利用行為の種類は、複製、公衆送信(自動公衆送信の場合は送信可能化も含む)、複製物の頒布です。これらの利用行為はいずれも本条1項に定める軽微利用の準備のために必要と認められる限度までとしています。もっとも、本条2項では同条1項と異なり、利用態様そのものに「軽微性」や「付随性」は要求されません。本項により権利制限の対象となる利用行為は、このようにサービス提供の準備段階でのデータベースの作成等のための著作物利用を念頭に置いており、その目的を超えて著作物を視聴等に供したり一般公衆に提供・提示したりすることは想定しておりませんので、本条第1項と異なり、特にその利用の態様を軽微なものに限定することとはしておりません。(加戸守行. (2021年12月21日).『著作権法逐条講義(七訂新版)』. 公益社団法人著作権情報センター,421頁)所在検索サービスや情報解析サービスの準備行為として必要であれば、著作物の全部を複製することも可能と整理されています。

 この点は、本条2項の重要な点で、検索サービスが最終的に表示するものがスニペット程度であっても、検索可能にするための準備には全文データベースの複製が必要になることがあります。インターネット検索エンジンでスニペット表示をするためには、そもそもの検索を可能にするために世界中のウェブサイトを複製する行為まで準備行為として考えるべきだと考えられています。

 特に情報解析サービスにおいて機械学習、深層学習、剽窃検索、ウェブ上の言語傾向の解析などでは、解析の前提として言語の著作物の全文を電子計算機内に蓄積する必要がある場合が多いです。こうした著作物の利用行為は著作権者の通常の著作物の利用市場と競合しにくく、むしろ違法とすると情報解析の発展を妨げるため、平成30年改正著作権法の47条の5は柔軟に著作物の利用を認める方向で整備されました。

ただし書き

 一方で、本条2項も無制限の著作物の利用を認める規定ではありません。本条2項のただし書により、当該公衆提供等著作物の種類および用途並びに当該複製または頒布の部数および当該複製、公衆送信又は頒布の態様に照らし著作権者の利益を不当に害することとなる場合には適用されません。この判断について、同条1項と同じく著作権者の著作物の利用市場と衝突するか、将来の潜在的販路を阻害するかという観点から、最終的には個別具体的に判断されます。

 さらに、本条2項ただし書は「著作権者の利益を不当に害する場合」のみを問題にしており、同条1項と異なり利用対象の著作物の公衆への提供等が著作権を侵害するものであることを知りながらのものという要件はありません。本条2項ではそれだけでは当然に「著作権者の利益を不当に害する」とまではいえないという見解も示されています。ただし、検索用データベースや情報解析用データベースを本来の検索・解析準備を超えて利用するような場合には、通常、権利者の利益を不当に害すると解さり得ると考えられています。

参照文献

岡村久道. (令和6年11月20日). 著作権法第6版. 株式会社 民事法研究会.

加戸守行. (2021年12月21日). 著作権法逐条講義(七訂新版). 公益社団法人著作権情報センター.

高橋龍. (2025年). 標準著作権法 第6版. 有斐閣.

作花文雄. (2022年12月20日). 詳解著作権法[第6版]. 株式会社ぎょうせい.

小泉直樹他. (2019年3月11日). 著作権判例百選(第6版). 有斐閣.

小泉直樹茶園成樹,蘆立順美,井関涼子,上野達弘,愛知靖之,奥邨弘司,小島立,宮脇正晴,横山久芳. (2023年6月15日).条解著作権法. 弘文堂.

中山信弘. (2014年10月25日). 著作権法(第4版). 有斐閣.

島並良上野達弘,横山久芳. (2024). 著作権法入門. 有斐閣.

文化庁著作権課. 令和5年度著作権テキスト.

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