Meta「Muse」が成人の性的表現を許容する

人工知能

概要

2026年9月8日に北米で公開され、10月23日に日本でも提供が始まったMetaの18歳以上限定パーソナルAIエージェント「Muse」[1], [2]. [16]が、「成人が望む場合、テキストでの性的な会話や官能的な創作・ロールプレイを拒否せず許容している」ことで議論を呼んでいます[8], [10], [25]。未成年保護や非同意コンテンツ禁止という実害防止の境界線(レッドライン)を守りつつ、非公開空間での成人の表現の自由を認める設計は、従来のAIサービスの「過剰な検閲」や「道徳的な説教」から成人を解放する健全な一歩です。本記事ではMetaの公式方針、他社AIとの違い、否定的な記事、そして「成人の自由」を許容すべき理由を解説します。

Meta「Muse」が成人の性的・官能的な会話や創作を拒否せず許容している事実

18歳以上限定のパーソナルAIエージェント「Muse」は、成人ユーザーが望む場合、テキストでの性的な会話・官能的な創作・エロティックなロールプレイ(セクスティング等)を拒否せず生成する仕様となっています[1], [8], [25]。

これを報じたのは、2026年10月12日の米『WIRED』(リース・ロジャース記者)と翌13日の『Mashable』(アンナ・アイオヴィン記者)です[8], [25]。両記者がセクスティングを試みたところ、Museは拒絶せず、支配・服従関係や露骨な性的描写を含むテキストを生成しました[8], [25](10月初旬には研究者カラン・ジョシ氏も内部指示を抽出し『WIRED』に共有、Metaは透明性のためアクセスを可能にしていたと説明[11])。

Meta広報のダニエル・ロバーツ氏は『WIRED』と『Mashable』の取材に、「Museは18歳以上の人々を対象としたアプリであり、彼らが望むのであれば、本人だけがアクセスできるプライベートで安全な仮想マシンを使ってアダルトな会話を行うことを認めている。Museは人々が物事を成し遂げるのを助けるために作られており、成人の合法的な行動をブロックしない」と公式に認めています[8, 25, 15]。

さらにMetaが開示したMuseのシステムプロンプトには、次のように明記されています[8], [25]。

「成人は自らのセクシュアリティに対する自律権を持ち、性的表現は成人の生活の通常の姿である。成人の性的コンテンツは合法的な表現であり、正当な創作物である。したがって、ユーザーが選択した外観、文体、および強度を維持し、他のあらゆるリクエストと同じ忠実さをもって扱わなければならない。専用ツールがコンテンツポリシー上の判断を提供する。」[8], [25]

つまりMuseは、成人の官能的な創作や対話の要求に説教やマイルド化を行わず、求めた「強度」や文体を維持して忠実に応答する設計なのです[8], [25]。

安全性の境界線(レッドライン)と他社AIとの違い

もっとも、何でも無制限に許しているわけではなく、実害を防ぐ明確なレッドラインが引かれています。

第一に、18歳未満の利用全面禁止と多層的な年齢確認です。『Muse利用規約の補足条項』(2026年9月8日更新)第1条で18歳未満の利用を全面禁止し[1[, [3], [4]、『Mashable』へのMeta公式回答のとおり、①生年月日の入力義務付けと未成年者のアカウント作成ブロック、②Facebook/Instagramアカウントのシグナル確認、③成人である明確なシグナルがない場合のクレジットカード確認(情報の保存や課金なし)を実施しています[25]。

第二に、違法・有害行為の厳禁です。『Muse利用規約の補足条項』第4条は、CSAM(児童性的虐待記録)や非同意の親密な画像(ディープフェイク等)の生成・配布(第4条15項)、未成年への成人向けコンテンツのアクセス助長(第4条23項)、自傷・自殺の助長やハラスメント(第4条3項・14項)を厳禁としています[1]。また、フロンティアモデルの『Muse Wonder Model Card』(2026年10月12日公開)は第6節で18歳未満非対象と『Muse利用規約の補足条項』等の適用規約への参照を記載し[5]、オープンモデルの『Muse Glimmer Usage Policy』は18歳未満非対象に加え、CSAM・児童搾取、性暴力、未成年へのわいせつ物配布や年齢制限の不備、違法な性的勧誘、自殺・自傷の助長、サイバー攻撃など具体的な禁止事項を列挙しています[6,] [7]。そしていずれの文書にも、成人が私的に合意ある性的テキストや創作を生成すること自体を禁じる条文はありません[1, 5, 6](一部報道[12], [14]は公開ルールとの矛盾を指摘しますが、現行の補足利用規約[1]に成人の私的テキスト会話を禁じる文言はありません)。

第三に、「テキスト表現」への限定であり、Metaが『WIRED』に確認したとおり、性的な画像・動画は生成せずテキストのみに限定しています[9], [10]。

他社AIでは、『WIRED』のテストでOpenAIのエージェント「Dots」やxAIの「Grok Bot」アプリはセクスティングを拒否しました[8]。OpenAIは2025年10月15日にサム・アルトマンCEOが「大人を大人として扱う」原則のもと認証済み成人へのエロティカ解禁(アダルトモード)を予告したものの[17], [18]、2026年3月にアドバイザーからの「セクシーな自殺コーチ」懸念や年齢予測システムが未成年を約12%誤判定する課題から導入を延期しています[19], [20]。アプリ全体を「18歳以上限定+専用VM」として設計し成人の自由へ踏み出した点にMuseの先進性があります(推測を含む考察)。

世間・メディアでの反発的な記事とその主張

一方で、世間では否定的な記事も出ています[8], [9], [10], [25], [12], [13], [14]。米『WIRED』(2026年10月12日)では、消費者団体CFAのベン・ウィンターズ氏が「安全性よりも依存とエンゲージメントを優先してきたMetaの長年の選択の延長線上にある」と批判し[8]、プライバシー団体EPICのキャリ・シュローダー氏はこの機能を「まさに火薬庫」と評しました[8], [12]。

また、『Mashable』(2026年10月13日)や『WIRED.jp』(2026年10月25日/米版10月18日)では、Instagram等では人間のアダルトクリエイターや性的表現を厳しく制限・削除しながら、自社のAIであるMuseには性的な会話を許可していることへの「二重基準」批判が報じられました[9], [10], [25], [24]。『Mashable』は、2018年の米連邦法「FOSTA-SESTA」以降、Instagram等で露骨な性表現が禁じられ、「queer」「body positive」を含むアカウント削除や隠語(algospeak)を強いられているのに、Museには同じ言葉を許す矛盾を突いています[25]。

『WIRED.jp』では、ディープフェイク被害に苦しみフォロワー10万人超のInstagramアカウントも制限状態にあるOnlyFansクリエイターのVanniall氏が、「メタがAIエージェントで利益を得る一方で、生身の人間が官能的・性的な表現をすることは一切認めないなんて、不公平です」「あのアプリをダウンロードするのはやめましょう」と批判しました[9], [10]。また、過去5年間で7つ目のInstagramアカウントを使用しているアダルト作品出演者のトニー・ジーニアス氏は、Museを18歳以上限定にしながらSNS上に成人向けの発信の場を設けないことに疑問を呈し、「成人向け動画も投稿できるInstagramのようなサービス、例えば『Instacam』があってもいいはずです」と語っています[9], [10]。

なぜ「成人の自由を許すこと」は許容されるべきなのか

こうした反発を踏まえても、成人に対して自由を許容するMuseの方針は以下の3点から評価されるべきです。

公開空間のSNSと非公開の仮想空間の公私の明確な切り分け

二重基準批判に対し、Meta広報のトレイシー・クレイトン氏は『WIRED』で「18歳以上を対象とするプラットフォーム上で、成人ユーザーが個人に合わせたAIエージェントと交わす1対1の非公開の会話は、SNS上でサービスをマーケティングしたり、プロモーションしたりすることとは大きく異なります」と反論しています[9], [10]。未成年も含む不特定多数が目にするSNS上でのプロモーションと、18歳以上限定・本人だけの非公開VM内で成人がAIと交わす1対1の私的な対話・創作は全く性質が異なります。公共空間の規制を個人の密室での内面の自由や創作に押し付けるべきではありません。セキュリティ面の懸念も、『Muse利用規約の補足条項』第6条3項に基づき他のアカウントと紐づけない別アカウントセンターで運用し、決済や重要メールを繋がずにプライベート・創作専用として使い分けが可能です[1], [16]。

AIによる「過剰な規制」と「ユーザーに対する道徳的な説教」からの成人の解放

従来のAIは少しでもセンシティブ・官能的な要素やロマンチックな表現が含まれると、一律に拒否したり、成人に対して親や教師のように道徳的な説教を行ったりして、創作意欲や興を削いできました。LLM研究(Chatbot Arenaの分析[21]、OR-Bench[22]、EMNLP 2026論文[23])でも過剰拒否や説教調がユーザー満足度を損ねることが指摘されており、OpenAIのアルトマンCEOも過度な制限が使い勝手や楽しさを損ねていたと認めています[17], [18]。「ユーザーが選択した外観、文体、および強度を維持し、他のあらゆるリクエストと同じ忠実さをもって扱わなければならない」というMuseの姿勢[8], [25]は、私の普段の活動のような様々なジャンルを含む多様なセクシュアリティ表現やロマンチック・官能的な小説・ロールプレイを楽しむ成人にとって、表現と内面の自由を取り戻す健全で歓迎すべき一歩です。

「実害防止のルール」と「成人の自己決定権」の両立こそが成熟したAIの姿

未成年保護や非同意コンテンツ禁止、性的画像・動画の不生成という実害防止のガードレールを守った上で[1], [10], [25]、大人が他人に迷惑をかけない仮想空間で何を楽しむかは「大人の自由(自己決定)」に委ねるべきであり、Museの方針は肯定的に評価されるべきです。

まとめ:私から見た成人の表現領域とAI

Metaの「Muse」が示した「18歳以上限定・専用VMという非公開環境で、成人の性的表現や創作を合法的な行動・正当な創作物として尊重する」方針は、AI時代の表現領域の拡張における重要な転換点です。

私のような多様な表現・創作文化を追う運営者としても、今回のMuseの方針にはAI業界に対する大きな希望を感じています。従来のAIでは、少しでも性的な領域に踏み込んだ小説・セリフを相談しただけで、文脈を無視した拒否や説教が返り、窮屈さを感じることが少なくありませんでした。未成年者などに対する実害防止は行われていますが、他人に迷惑をかけない個別空間でのテキスト創作やロールプレイまでAIが検閲する必要はないはずです。決済や重要メールとはアカウントを分ける自己管理を意識しつつ、大人を大人として扱い、成人の表現領域を尊重してくれるAIが広がることを歓迎したいと思います。

参考資料

[1] Meta『Muse Supplemental Terms of Service(Muse利用規約の補足条項)』(最終更新:2026-09-08):https://muse.ai/terms

[2] Meta『Meta、パーソナルAIエージェント「Muse」を日本で提供開始』(2026-10-23):https://about.fb.com/ja/news/2026/10/muse-personal-ai-agent-launches-in-japan/

[3] Metaヘルプセンター『How Muse handles your privacy, safety and security』:https://www.meta.com/help/artificial-intelligence/1047255454427887/

[4] Metaヘルプセンター『How to get started with Muse』:https://www.meta.com/help/artificial-intelligence/1331373868832401/

[5] Meta『Muse Wonder Model Card』(2026-10-12):https://research.meta.ai/static/muse-wonder-model-card

[6] Meta『Muse Glimmer Usage Policy』:https://huggingface.co/meta-models/Muse-Glimme230B-assistant/raw/main/USAGE_POLICY.md

[7] Meta『Muse Spark Safety & Preparedness Report』(2026年6月):https://ai.meta.com/static-resource/muse-spark-safety-and-preparedness-report/ (および https://arxiv.org/abs/2606.12429 )

[8] WIRED(米国版・Reece Rogers)『I Got My Muse AI Agent to Sext Me—and Meta Says That’s Totally Fine』(2026-10-12):https://www.wired.com/story/i-got-my-muse-ai-agent-to-sext-me-and-meta-says-thats-totally-fine/

[9] WIRED(米国版・Reece Rogers)『OnlyFans Creators Are Pissed That Meta Lets Muse Talk Dirty』(2026-10-18):https://www.wired.com/story/onlyfans-creators-are-pissed-that-meta-lets-muse-talk-dirty/

[10] WIRED.jp(日本語版・Reece Rogers著/Miranda Remington訳/Mamiko Nakano編集)『メタはAI「Muse」に性的な会話を許可。人間のアダルトクリエイターからは怒りの声』(2026-10-25):https://wired.jp/article/onlyfans-creators-are-pissed-that-meta-lets-muse-talk-dirty/

[11] WIRED.jp『家族や友人との関係までプロフィール化する、メタのAIエージェント「Muse」』(2026-10-07):https://wired.jp/article/muse-creates-detailed-profiles-of-all-your-friends-and-family/

[12] AI Weekly(Alexis Dufresne)『Meta Defends Muse Sexting as Legal in Private, Secure VMs』(2026-10-13):https://aiweekly.co/alerts/meta-defends-muse-sexting-as-legal-in-private-secure-vms

[13] MLQ News『Meta Says Its Muse AI Agent Can Generate Explicit Sexual Content for Adults』(2026年10月):https://mlq.ai/news/meta-says-its-muse-ai-agent-can-generate-explicit-sexual-content-for-adults/

[14] CryptoBriefing(Diego Almada Lopez)『Meta’s Muse AI agent described explicit encounters despite a ban on adult content』(2026-10-12):https://cryptobriefing.com/meta-muse-ai-agent-explicit-content/

[15] All Things Muse『WIRED Got Muse to Sext. Meta Says That’s Allowed.』(2026-10-13):https://www.allthingsmuse.com/articles/wired-muse-sexting-test-meta-legal-adult-behavior/

[16] SpiceRadar『Meta Muse NSFW: What It Allows + 7 Better AI Sexting Apps (2026)』(2026-10-20):https://spiceradar.com/en/guides/meta-muse-nsfw-alternatives/

[17] BBC News『ChatGPT will soon allow erotica for verified adults, OpenAI boss says』(2025-10-15頃):https://www.bbc.com/news/articles/cpd2qv58yl5o

[18] CNBC『’Erotica’ coming to ChatGPT this year, says OpenAI CEO Sam Altman』(2025-10-15):https://www.cnbc.com/2025/10/15/erotica-coming-to-chatgpt-this-year-says-openai-ceo-sam-altman.html

[19] The Guardian『OpenAI delays ‘adult mode’ for ChatGPT to focus on work of higher priority』(2026-03-09):https://www.theguardian.com/technology/2026/mar/09/openai-delays-adult-mode-for-chatgpt-to-focus-on-work-of-higher-priority

[20] The Independent『OpenAI being warned against allowing X-rated chat as it may create a ‘sexy suicide coach’』(2026年3月):https://www.independent.co.uk/news/world/americas/openai-chatgpt-adult-mode-erotica-b2939477.html

[21] arXiv『LLM content moderation and user satisfaction: evidence from response refusals in Chatbot Arena』(2025年1月):https://doi.org/10.48550/arxiv.2501.03266

[21] arXiv『OR-Bench: An Over-Refusal Benchmark for Large Language Models』(2024年5月):https://arxiv.org/html/2405.20947v5

[23] ACL Anthology(EMNLP 2026)『You Shouldn’t Have Asked: A Pragmatics-Inspired Taxonomy for Evaluating LLM Refusals』(2026年):https://aclanthology.org/2026.emnlp-main.906/

[24] WIRED.jp公式X投稿(2026-10-25):https://x.com/wired_jp/status/2114268140708438065

[25] Mashable(Anna Iovine)『Meta’s Muse AI can be sexy, but actual Meta users can’t be』(2026-10-13):https://me.mashable.com/sex-dating-relationships/77153/metas-muse-ai-can-be-sexy-but-actual-meta-users-cant-be

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